Tokyo International Clinic

メディカルコラムMEDICAL COLUMN

高田 茂 東京国際クリニック / 一般内科・腎臓内科
メディカルコラム vol.23
自覚症状の少ない慢性腎臓病
高田 茂 / 一般内科・腎臓内科

2004年 三重大学医学部卒業
2006年~ 秀和総合病院 腎臓内科勤務
2009年~ 東京医科歯科大学 医学部附属病院 血液浄化療法部
2010年~ 東京都立広尾病院 腎臓内科勤務
2012年~ 草加市立病院 腎臓内科勤務
2014年~2018年3月 東京国際クリニック / 医科 腎臓内科*非常勤 (2018年3月退職)
2016年~ さくらクリニック武蔵小杉内科・小児科 院長

腎臓のはたらきとは

糖尿病や高血圧などのいわゆる「生活習慣病」を放置しておくと、やがてさまざまな臓器に異常が現れます。腎臓は、腰のあたりに左右2つある、そら豆のような形をした握りこぶし大の臓器で、毎日約150リットルもの血液をろ過して老廃物を尿として体外に排出しています。
このろ過機能以外にも体液の量や血圧の調整をしたり、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの電解質のバランスを保つ働きをもっています。さらに赤血球を作るエリスロポエチンというホルモンをつくる機能や、ビタミンDを活性化して骨を健康に保つ機能なども担っています。いわば全身をコントロールしている調整役のような重要な臓器です。

CKD(慢性腎臓病)の定義と症状

CKDの病態は3か月以上持続する「尿の異常」や、「片方の腎臓のみ働いているような腎臓の左右の形態異常」、「腎機能が60%未満にまで低下した状態」と定義されています。
CKDの症状は一般的にはむくみ、倦怠感、食欲低下などがありますが、初期にはほとんど自覚症状がありません。症状が現れたときには、病気がかなり進行している可能性もあるため、定期的に人間ドックや検診を受けて頂くようお勧めいたします
中には血尿で来院される方もいます。見た目が赤い尿なので驚かれると思いますが、血尿で疑われるのは膀胱がんなどの尿路の悪性腫瘍や、女性の場合では膀胱炎や感冒後の腎炎などの可能性もあり、腎臓や膀胱などを見る腹部エコーやCT検査と、尿の中に悪性の腫瘍があるかどうかを判別できる尿細胞診をお勧めしています。生活習慣病である糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満などが腎機能を低下させるリスクファクターになりますので注意が必要です。そのため、我々は既往歴なども確認しながら診療を進めています。

CKDの診断はまず尿検査から

腎臓の状態をみる検査は尿検査が一番のスクリーニングとされています。公的な健康診断では、尿の蛋白と糖だけを調べますが、それではCKDの見落としもあるかと思います。そこで当院の人間ドックでは、これらに加えて更に尿検査の項目数を増やし、血液検査でもCKDの早期発見マーカーを測定することで、さらに幅広くより早期にCKDを発見出来るようにしておりますので大変安心です。異常が疑われるケースでは、超音波診断やCT検査、尿細胞診などの精密検査で病変の状態などを知ることも可能です。

CKDの根本的な治療はないので健診は重要

大変残念ですが現在の医療ではCKDの根本的な治療法はありません。急性腎障害(AKI)といった例外を除くと、腎臓は一度悪くなると元には戻らないのです。現状維持か、腎不全~透析への移行を少しでも遅らせるという方法しかありません。
透析導入の原疾患の第一位は糖尿病性腎症です。つまり、CKDから末期腎不全となり新たに透析に移行される方の約44%は、糖尿病が原因となっております。その他にも高血圧が原因で透析になる方たちもいますので、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の治療をすることが、CKDの発症予防や透析への移行を防ぐことになります。
我々腎臓専門医は、患者様の腎臓の状態を診て、この後どのくらいの期間で末期腎不全になるかという予測を立てることができます。長い方ではこの期間が20年かそれ以上という方もいらっしゃいます。こうしたまだ透析にはならない保存期の方は、減塩などの食生活の管理法も重要です。特に糖尿病合併の方のお食事は、糖尿病だけの方の食事療法とは異なりカロリー制限をあまり厳しくしては良くないなどCKDの進行具合に応じて調整が必要で、この違いに少し混乱されることもあります。CKDの進行具合に合った食事管理を実践し、合併症の予防をして頂くことも大切です。
まず運動や食生活、肥満などに注意して生活習慣病にならないようにすること、糖尿病になったら血糖値コントロールをしっかりと行って、腎臓への負担を少しでも少なくさせることがCKDにならないための重要なポイントです。
ぜひ人間ドックを定期的に受けてご自分の身体の状態を把握して、腎臓をいたわっていただければと思います。