Tokyo International Clinic

メディカルコラムMEDICAL COLUMN

大槻 穣治 東京国際クリニック / 外科
メディカルコラム vol.1
サルコペニアをご存知ですか?
大槻 穣治東京国際クリニック / 外科

医学博士
一般財団法人日本ボクシングコミッション理事(コミッション ドクター)
日本大学医学部卒業
駿河台日本大学病院救命救急センター医長、日本大学医学部救急医学科講師を経て東京慈恵会医科大学総合診療科准教授、東京慈恵会医科大学附属第三病院救急部診療部長
2014年より東京国際クリニック / 医科非常勤勤務

若い人でも発症するサルコペニア

中高年になると男性でも筋肉が衰えてきます。サルコペニア(sarcopenia)とは全身性の骨格筋量や骨格筋力の低下を特徴とする症候群のことです。サルコはギリシア語で「肉・筋肉」、ぺニアは「減少・消失」という意味で、「筋量の減少と身体的な機能の低下を認める状態」と定義されています。
サルコペニアは、加齢に伴うものを「原発性サルコペニア」、活動や疾患、栄養に関連するものを「二次性サルコペニア」と大きく2つに分類されています。
普段あまり運動しない人では、30歳ごろから毎年0.5~1%ずつ筋肉の量は減っていき、80歳では約30%の筋肉が減少すると言われており、高齢者だけでなく過度のダイエットや座ったままの仕事をしている若い人にも発症しています。
では最近よく耳にする「ロコモティブシンドローム」とどこが違うのでしょうか。ロコモは「筋肉、骨、関節、軟骨などの運動器の障害が起こり、立つ、歩くという機能が低下した状態」を指します。どちらも悪化すると日常生活が困難となり、要介護や寝たきりのきっかけとなります。
私たちの身体には600以上の筋肉がついています。上腕や下肢、胸筋、腹筋など目に見える筋肉だけでなく、心臓を動かしている心筋や、腸を支えているのも平滑筋という筋肉です。また、目の焦点を合わせているのは毛様体筋で、筋力の低下は、このような体内の筋肉にも起こりますので、加齢とともに体のあちこちに不調が現れるわけです。

筋力が低下すると日常生活にも影響が

筋力が低下してくると、私たちの日常生活にも様々な影響が出てきます。まず姿勢を司る筋力が落ちると猫背になり、姿勢も悪くなります。仕事の能率も低下します。
骨粗しょう症や不眠を引き起こすこともあります。さらに認知症や慢性疲労症候群、うつ病などにつながる危険性も指摘されています。筋肉は脳からの指令で動きますので、筋力が落ちると脳からの指令を受けても動きづらくなり、四肢の運動に障害が出てきます。歩く速度が若いころに比べて遅くなったり、走ると膝に痛みが出ることもあります。

サルコペニアを少しでも防ぐために

運動をして少しでも筋力の低下を防ぎたいものですが、いきなり長距離マラソンを始めたり、過重な筋力トレーニングをすることは決してお勧めできません。それは、中高年では膝や腰に見えない障害をもっている方が少なくないからです。こうした障害や疾患がある方は十分に検査し、治療をしてから筋力維持のための行動を起こしましょう。サルコペニアの診断は、CT撮影やMRI撮影、骨密度検査(DEXA法)などで行います。
私がお勧めしたい筋力維持の方法は、屋外でのウォーキングです。太陽に当たり風を感じて公園などをウォーキングすれば筋力の急激な低下を少しでも防ぐことができますし、何よりストレス解消にもなります。
膝などに負担がかかり、屋外でのウォーキングは無理という方には、「水中ウォーキング」をお勧めします。プールで歩くという方法で、浮力により体重の負荷も膝にかからず、水の抵抗もあり筋力をつける良い運動法です。
ただ、テレビなどでよく見られる身体に貼って電気刺激により筋肉が簡単につくという健康器具がありますが、たしかに筋量は増えますが、実用的でバランスの取れた筋力はつきません。

食事改善やプロのアドバイスも効果的

食事の面では、ご高齢な方は動物性のたんぱく質を摂れないとおっしゃる方もいますが、ご高齢だからこそ動物性たんぱく質は筋力維持に欠かせない栄養素です。もちろん、日頃からバランスのとれた食事を心がけることは一番の健康法と言えます。当院では管理栄養士を含め、受診者様の食事改善のアドバイスも行っています。どうぞお気軽にご相談ください。
また当院はライザップと提携しています。ライザップでは、筋量や筋力の厳密な測定を行い、個人に合わせた筋力維持プログラムを専門トレーナーが作成してからトレーニングを始めることが可能なので安心です。
皆さまも「年のせい」と言わずに、ぜひスポーツの秋に筋力維持・強化にトライしてみてはいかがでしょうか。

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