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メディカルコラムMEDICAL COLUMN

片桐 聡 東京国際クリニック / 消化器外科(肝胆膵外科)
メディカルコラム vol.46
増加している膵臓がんを
発見するために
片桐 聡東京国際クリニック / 消化器外科(肝胆膵外科)

膵臓の位置と役割

図1:膵臓の位置
(図1:膵臓の位置)

膵臓は図1のように胃の裏側にある長さ20cmほどの臓器で、位置的にも体の深部にありなかなか観察しにくい臓器です。膵臓のはたらきは大きく2つあり、ひとつは消化液である膵液を出すことで膵管を通して十二指腸につながっています。さらにもう一つのはたらきはインシュリンを出して血管内にある糖を細胞内に取り込み、血糖値をコントロールしています。十二指腸につながっている部分を膵頭部といい、左側に上がっている先を膵尾部といいます。

増加している膵臓がんとその因子

膵臓がんは年々世界的に増加しており、男女ともがんにおける死因の第4位を占めています。膵臓がんは60歳以上になると増加します。(図2)肝臓がんのリスク因子としては、生活習慣病で特に糖尿病や肥満のある方、喫煙をしている方、多量に飲酒をされる方が挙げられます。さらにまだ遺伝子異常のメカニズムは不明な点が多いのですが、親族に膵臓がんの人がいる場合は膵臓がんになる確率が一般の人に比べて4割高いと言われています。膵臓がんにかかった人が家族に2人いるとそのリスクは10倍、3人いると40倍、膵臓がんになりやすいといわれており、「膵がん家系」が最近では注目されています。加えてアルコールが原因の慢性膵炎から膵臓がんに進行するケースもあります。また、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)という腫瘍があり、これは良性腫瘍なのですが、膵臓がんに移行していくリスクがあります。

(図2:年齢階級別死亡率(2016)国立がん研究センター)
(図2:年齢階級別死亡率(2016)国立がん研究センター)

患者さんの訴えは・・・

膵臓がんを発症した患者さんの訴えで、明らかに膵臓がんと結びつくものはありません。中には胃部の不快感、腹痛、食欲不振、体重減少などがありますが、明らかな症状が見られるときには、既にかなりがんの進行が進んでいますので、患者さんの訴えからこのがんを発見することは困難です。

膵臓がんの診断

がんを血液で発見する「腫瘍マーカー」という検査がありますが、これはあくまでも補助診断ということで、現段階では血液で膵臓がんがわかるということは少ないです。さらに、膵臓の超音波検査なども行われますが、体内ガスや脂肪の影響を受けることもあります。診療ガイドラインでも一番有用であると言われているのが造影CT検査です。さらにMRCPと呼ばれる検査も行われます。これはMRI検査の一種です。MRCPでは膵管の形状を見ることにより、がんの有無を確認することができ有用性が非常に高いと言われています。膵管というのは通常1~2mmの大変細い管です。この膵管には1日500〜700ccもの膵液が膵臓から腸へ流れていますから、がんが膵管にできると尾部の膵管が3~4mmになりMRCPで判明します。MRCPで膵臓がん疑いとなった場合は、EUS(超音波内視鏡検査)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)、細胞診(超音波内視鏡を使用して膵臓の細胞や膵液を採ってがんの有無を調べる検査)など検査のステップを上げていきます。これらの検査はがんの「存在度診断」と呼ばれ、膵臓にがんがあるかどうかを確認する検査です。次に進展度診断を行います。血管内にがん細胞が入っているか、他の臓器に転移をしていないかなどを調べてステージを決めていきます。

膵臓がんのステージとは・・・

膵臓は体の深部にあるため、がんが発見しづらく、発見したときにはもうかなり進行しているケースが少なくありません。膵臓は周囲に大きな血管があることに加え、1cmのがんでも進行がんと言えます。すなわち、「早期がん」という段階のものはほぼなく、ほとんどの場合は「進行がん」として発見されます。膵臓がんのステージは、他のがんと同様Ⅰ~Ⅳの4段階ですが、ステージⅠ(大きさが2cm以下で膵臓内だけにあるのか、2cmを越えているが膵臓内だけにある*)で発見されるのは全体のわずかに3%と言われるほどで、発見される膵臓がんの多くはステージⅢ、もしくはⅣです。
(*日本膵臓学会のステージ分類による)

膵臓がんの治療

膵臓がんの診断・治療は、ガイドラインにより定められた規準に則って進められます。治療は、薬剤を使用した治療と手術の大きく2本の柱ですが、最近ではステージによりこれらを組み合わせた治療が主流となっています。代表的な治療例としては、手術を行う前に約半年間程度がんの拡大を抑えるため抗がん剤を使用した術前抗がん剤療法を行い、手術、そして術後抗がん剤を行うといういわゆる「サンドイッチ療法」が注目され行われています。抗がん剤については、研究が進み2~3種類を組み合わせて使用するケースも出てきています、抗がん剤の副作用も気になるかと思いますが、軽減対策もかなり研究が進んでいます。手術はがんができている部位により術式が異なります。膵臓頭部では十二指腸、小腸の一部、胆嚢、胆管なども切除します。膵臓尾部にがんができた場合は、当該部位と脾臓を一緒に切除します。

膵臓がん治療のレールはできている

膵臓がんに限らず、現代は「がんは2人に1人がかかる病気で、しかも治る病気」です。膵臓がんの治療のレールは、先述のガイドラインなどによりしっかりと敷かれていて、どこの施設でも標準化されています。免疫療法などもありますが、これはまだエビデンス(医療的な証明)が十分とは言えません。残念ながら膵臓がんと告知を受けた方は、この確立された治療のレールの上を邁進していただきたいと思います。

膵臓がんにならないために

膵臓がんにならないためには、生活習慣病がリスク因子になることも知られているので、糖尿病にならないように努めることや肥満、食生活など生活習慣を見直していただき、禁煙を実行すること、アルコールも控えるようにして、人間ドックを毎年1回は受診していただくことが早期発見につながります。

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