メディカルコラムMEDICAL COLUMN

「MRCP(MR胆管膵管撮影)」とは
医学博士 総合内科専門医
日本消化器病学会専門医 日本肝臓学会肝臓専門医
膵臓・胆のうのはたらき
膵臓は、胃の後ろ側にある長さ約15センチの臓器で、消化液(膵液)を分泌する外分泌機能と、インスリンなどのホルモンを分泌する内分泌機能をもっています。膵液には、糖質を分解するアミラーゼやたんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどの消化酵素が含まれており、膵管を通して十二指腸に流され消化を助けるはたらきをもっています。
一方、胆のうは、長さ約10センチ、肝臓で作られた50~60mlの胆汁を貯え濃縮することができる臓器です。肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中にあり、洋ナシのような形をしています。胆汁も胆管を介して十二指腸に排出され、脂肪を乳化して小腸から吸収されやすくする作用をもっています。
膵臓がんは増加傾向
膵臓がん、胆道がん(胆のうがん、胆管がん)はいずれも予後の悪いがんで、症状が出た時にはすでに手遅れということが少なくありません。下図のように、部位別のがんの年齢調整死亡率(昭和60年の年齢構成に合わせた10万人当たりの死亡者数)でみると、食道がんなど多くのがんは近年減少傾向にありますが、膵臓がんは男女ともいまだ増加傾向です。また膵臓がんや胆道がんは、通常の人間ドックでは早期発見が難しいがんでもあります。


MRIの技術進歩で描出可能に
従来は膵臓がんや胆道がんの検査法として、内視鏡を十二指腸まで入れてそこから細いカテーテルを伸ばして造影剤を入れてX線でみるERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影法)という方法がありましたが、侵襲も大きくがんの疑いのある方を対象に入院をして行う検査でした。
近年、MRIの技術が進歩し、造影剤を使わなくても膵管や胆管の詳細な描出が可能になりました。MRCPはMagnetic Resonance Cholangiopancreatographyの略で、MRIの技術で膵管、胆管を詳細に写し出すことのできる検査です。
MRCPで膵がんや胆管がんの早期発見を
膵臓がんや胆管がんの大部分は膵管、胆管に異常をきたすため、MRCPでこれらの異常をとらえることにより膵臓がんや胆管がんの早期発見に繋がります。もしMRCPで膵管や胆管に異常が見られた場合は、造影剤を使用したダイナミックCTにて精密検査をするという流れになります。
またMRCPは、のう胞の描出にも優れた検査で、近年、膵のう胞性腫瘍(のう胞腺腫やのう胞腺がん)も増加傾向で、これら疾患の診断にはMRCPが非常に優れています。従って人間ドックでMRCPを行う意義としては、一つは膵管や胆管の異常をとらえて膵がん、胆管・胆のうがんの早期発見に繋がることと、もう一つは膵のう胞性腫瘍の発見にあります。
これらの疾患はいずれも超音波検査や、造影剤を使用しない単純CTでは盲点になりやすい疾患であり、MRCPを組み合わせることでより精度の高い膵・胆道系のがんのスクリーニングになります。


40歳になったらMRCPを
MRCPの画像診断の結果がんが疑われる方には、ダイナミック造影CT検査を受けていただき、さらに確定診断をつけていくことになります。
がんの好発年齢である40歳を過ぎたら、ぜひMRCPを受けていただき、見つけにくい膵臓がん、胆のうがん、胆管がんの早期発見に努めてください。苦痛がなく、合併症も身体への負担もないMRCPをお勧めします。