メディカルコラムMEDICAL COLUMN

東京国際クリニック / 婦人科
医学博士 日本産婦人科学会専門医
日本医科大学武蔵小杉病院
女性診療科・産科入局
日本医科大学大学院統御機構腫瘍学にて婦人科病理学を研究し博士課程修了
日本医科大学武蔵小杉病院診療科・産科助教を経て2016年より東京国際クリニック / 医科 非常勤勤務
診察は丁寧な問診から

本当に更年期症状は個人差が大きいなと日々実感しています。「顔から火が出るよう」と言われる方もいれば「体や手足が冷えて困る」という方もいらっしゃいます。一方、とてもイライラする方もいれば、うつ状態のように落ち込む方もいて、診察室では様々な訴えが今日も続きます。
こうした様々な症状は、受診者様個人個人の体質にもよりますが、女性ホルモン(エストロゲン)の加齢に伴う減少が急に来る方、ゆっくりと来る方とでは違ってくるということがあります。
まず診療で求められるのは、じっくりと症状の内容をお聞きして受診者様個人個人に合った治療法を選択するということだと思います。
早い方は40歳代半ばくらいからご相談があります。更年期障害は不定愁訴ともよばれ毎日同じように続く症状ではありません。ご家庭の状況、お仕事の状況、生活の変化など周辺の情報も重要な診療の要素になりますので、こうした相談型の診療体制は受診者様に大変好評です。
まず漢方薬でじっくりと治療
私の更年期症状への治療法は、まず症状に合った漢方薬の選択から始めます。例えば、ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり・発汗)が起こる受診者様には当帰芍薬散、桂枝茯苓丸などの漢方薬を処方します。漢方薬は3か月以上続けることでじっくりと効果が発現します。
もちろん更年期症状のかなり強い方にはHRT(ホルモン補充療法)も行いますが、この治療法のご説明をすると、いきなりホルモン補充療法をやるには抵抗があると言われる方もいらっしゃって、ここは受診者様とご相談して決めています。現代はインターネット時代ですから、ホルモン補充療法の副作用などをよくご存じの方もいますが、一方で「忙しいからすぐにでもHRTを始めてください」とおっしゃる方もいて症状同様、治療法の選択も様々です。

先々を考えると重要な骨密度検査
更年期障害では目に見える症状の他にも、骨粗しょう症など隠れた症状が進行することがあります。これには骨密度検査を定期的に行いチェックすることが大変重要です。
高齢になって転倒~骨折~寝たきり~要介護という流れはよく言われることですが、40歳代からご自分の骨密度をしっかりと把握しておくと、50歳代に入って更年期障害の年齢を迎えてもしっかりとした備えになります。「20年先、30年先を見据えた健康管理は、継続的な健康診断から」とよく受診者様に説明して、人間ドックを受けていただくようお話ししています。
研究が進むサプリメント
当クリニックでは更年期症状のある受診者様にサプリメント(エクオール)をお勧めしています。このエクオールは大豆由来の食物サプリですから安心して飲むことができます。エクオールにはエストロゲンのような作用があり、更年期症状を和らげるだけでなく、骨、皮膚、血管、脳を守るはたらきがあります。
さらにエクオールはメタボリックシンドロームの予防や、男性ホルモンのアンドロゲンが過剰に産生されることを抑制するため、前立腺がんや脱毛症状にも良い影響を及ぼすと言われています。男性の更年期症状の緩和にもはたらきますので、男性の方もぜひご相談ください。
薬を飲み忘れていくことで治療は終了
「高齢者の薬の飲み忘れ」が話題になっていますが、こと更年期障害について言えば、飲み忘れは症状が軽快していることの証だと思います。徐々に薬を飲む量が減っていったり、「あ、きょう薬飲み忘れちゃった」というくらいになれば、症状も収まってきていると判断できます。
久しぶりに来院された受診者様から「思えば、あんなに発汗がひどかったのにね」と言われると、症状の改善に私も大変嬉しくなります。