Tokyo International Clinic

メディカルコラムMEDICAL COLUMN

佐藤 杏月 東京国際クリニック / 婦人科
メディカルコラム vol.20
ホットフラッシュと更年期障害
佐藤 杏月東京国際クリニック / 婦人科

東京国際クリニック / 婦人科
医学博士 日本産婦人科学会専門医
日本医科大学武蔵小杉病院 女性診療科・産科入局
日本医科大学大学院統御機構腫瘍学にて婦人科病理学を研究し博士課程修了
日本医科大学武蔵小杉病院診療科・産科助教を経て現在非常勤講師として勤務
2016年より東京国際クリニック / 医科 非常勤勤務

個人差が大きい開始年齢と多彩な症状

「顔から火が出るよう」と言われる女性の患者様がいます。更年期障害のホットフラッシュと呼ばれる症状です。更年期になると、加齢に伴う卵巣機能の低下により女性ホルモン(エストロゲン)の量が減り、脳の視床下部にある自律神経に影響して自律神経失調症を引き起こします。また生活環境や家庭環境の変化がこの年齢では起こりやすく、そうしたストレスが元でイライラしたり、落ち込むなどの精神症状が現れます。この自律神経失調症の症状と精神症状が、更年期障害の2大症状と言われています。更年期障害は、50歳頃に迎える閉経をはさんだ前後約10年間に現れる症候群です。この期間に起こる心身のさまざまな不調が更年期障害で、年齢の幅も症状も個人差がとても大きいです。更年期障害の主な症状は、肩こり、ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり・発汗)、頭痛、めまい、骨密度の減少、原因不明の体の不調(不定愁訴)など実に多彩です。子供が独立したり(空の巣症候群)、漠然とした将来不安からくる不眠などを訴える方もいます。これらの中でホットフラッシュは、患者さん全体の40~80%に見られる症状で、通勤時の車内や人混みの中で起こると、患者さんにとってはとてもつらいものとなります。また骨密度の減少は、重症になると骨粗しょう症となり骨折しやすくなります。更年期障害では、仮に症状があっても治療が必要になる症状と、必要のない症状があります。ホットフラッシュで、治療が必要になる方は約1/4。更年期の期間が過ぎると症状は徐々に自然消失します。

更年期障害の診断・治療は他科の協力も得て

実は更年期障害は、我々医師にとっても確定判断が難しい疾患なのです。通常、医師は様々な主訴でクリニックにお出でになる患者さんの診断を検査などのデータを元に行うのですが、更年期障害の裏には他科の別の疾患が隠れている可能性があります。医師はAの病気を疑い、Bの疾患を疑って様々な検査をしても証拠が出ないとき「これは更年期障害なのでは?」と診断することになります。これを「除外診断」と呼びます。検査は、血液検査で女性ホルモンの数値を確認しますが、閉経前の方ではこの数値からも更年期障害はわかりにくいものです。さらにクッパーマン更年期指数や簡略更年期指数という指数を使い、更年期の状態が客観的に評価することができます。

治療法は様々でサプリメントも

更年期障害の治療は、導入は漢方薬が広く用いられます。また、更年期障害は女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少によるものであるため、ホルモン補充療法(HRT)というエストロゲンを補うことで、身体的・精神的な症状を改善する治療法もあります。これは、飲み薬タイプ、貼り薬タイプなどがあり、最近ではジェルのように塗って皮膚から女性ホルモンを補うという方法もありますので、ご自分のライフスタイルに合わせてお選びいただけます。ただしこのホルモン補充療法は、5年間続けると乳がんや子宮体がんのリスクが1.3~1.4倍高くなるというデータがありますので定期的な検査が必要です。さらにサプリメント(エクオール)もご希望の方にはお勧めしています。特にのぼせ・肩こりに良いと言われ、食品なので使う方にも安心感があります。

ご家族のサポートも大切

上記のような症状に最初に気づかれるのは、ご家族の方という例も少なくありません。奥様が「少し具合が悪い」、「最近どうもイライラする」と言われたら、ご主人様でも結構ですからぜひ当院の婦人科にお早めにご相談ください。当院では各種の検査を含めて、診断・治療に当たらせていただきます。婦人科のスタッフは全て女性ですので、奥様にも安心してご来院いただけます。またイライラ感やうつ病などの症状は、必要であれば心療内科へのご紹介もいたしております。こうした更年期障害は、「時が来れば症状がなくなるのだから、じっと我慢」という時代もありました。しかし、よりアクティブなライフスタイルを送る現代の女性は、積極的に更年期障害の症状緩和に努めていらっしゃるようです。

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