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メディカルコラムMEDICAL COLUMN

宮崎 郁子 東京国際クリニック / 医科副院長・消化器内科
メディカルコラム vol.55
肥満が原因の脂肪肝・高尿酸血症について
宮崎 郁子東京国際クリニック / 医科副院長・消化器内科

新型コロナウイルス感染症対策の一つとして、ステイホームやリモートワークが拡がる中、食生活の乱れや運動不足からくる肥満、ストレスが生活習慣に悪影響を及ぼす事が懸念されています。今回は消化器内科専門医である宮崎郁子先生に「肥満に起因する消化器疾患」として脂肪肝と痛風(高尿酸血症)についてお話しいただきました。

脂肪肝について

1.脂肪肝の概要
1.脂肪肝の定義とは・・・

肝臓はエネルギー源としての脂肪を作り、肝細胞の中に溜めています。しかし、使うエネルギーよりも作られた脂肪の方が多いと肝細胞に脂肪が溜まり過ぎます。全肝細胞の30%以上が脂肪化している状態を「脂肪肝」と呼びます。

2.肝臓に脂肪が蓄積する原因は・・・

脂肪肝の原因は、過栄養による肥満、アルコール飲料の飲み過ぎ、糖尿病によるインスリン上昇などが挙げられます。

3.脂肪肝の種類

脂肪肝には、アルコールが関与しているものと関与していないものがあります。その中でも特に注意したいのは「NASH」(非アルコール性脂肪肝炎)と呼ばれる脂肪肝です。NASHは、肝硬変や肝臓がんに進行し、最終的には死に至る可能性の高い脂肪肝です。

4.肥満は脂肪肝になりやすい

BMIが高いと脂肪肝の割合は当然増加します。BMI 25以上の方では7割以上が脂肪肝を生じていると言われています。一方、BMI 25未満でも、約15%に脂肪肝が認められるという報告もあります。現在の体重だけでなく、成人以降の体重増加が非アルコール性脂肪性肝疾患のリスクとなることが解明されています。

2.生活への支障は少ないが・・・

肝臓は「沈黙の臓器」と称されるように、脂肪肝は自覚症状もほぼなく、診断された時点では既に脂肪が蓄積しています。ただ、肝臓に脂肪が溜まること自体は健康に大きな悪影響を及ぼすことはありません。しかし、肝臓の線維化が進行し、肝臓がんに進展する可能性があることは記憶しておく必要があります。欧米の報告では、肝臓の線維化が進み肝硬変になると死亡率は約6割高まり、肝臓の病気で亡くなるリスクは約40倍になるとのことです。

3.脂肪肝の検査と診断

脂肪肝を発見する最適な方法は腹部の超音波検査です。中等度の脂肪肝はCT検査でも発見できます。血液検査のデータでは、特にAST(GOT)、ALT(GPT)の数値や、γ-GTPの値にも注目して診断します。

4.脂肪肝の治療は大きく2種類

脂肪肝を発見する最適な方法は腹部の超音波検査です。中等度の脂肪肝はCT検査でも発見できます。血液検査のデータでは、特にAST(GOT)、ALT(GPT)の数値や、γ-GTPの値にも注目して診断します。

1.栄養食事療法と運動療法を組み合わせた指導

BMI(体重)が高いと脂肪肝の割合が増加するので、肥満の改善は必須です。まず、現体重の5~7%(70㎏の方で3.5~5㎏)の減量が必要です。また、肝臓の線維化が進行している方は10%程度減量することが推奨されています。食事からのエネルギー量をコントロールと運動で、少しでも体脂肪を燃焼させることが重要です。

2.薬物療法

脂肪肝に対する治療薬の開発は、世界中で進んでいますが、まだ確立されていません。抗酸化作用があるビタミンEや一部の糖尿病薬が有効であると言われています。基礎疾患としての有無により、処方される薬が異なりますので、消化器科の医師にご相談ください。

POINT!

海外での研究によると、コーヒー(カフェイン入り)が肝臓の線維化を抑制すると言われており、1日3杯以上飲むことが推奨されるとのことです。

痛風(高尿酸血症)について

1.痛風の概要とは・・・

痛風の患者は国内で60万人以上と言われています。近年の特徴は20~30歳代の若年発症が増加していることです。従来、痛風は男性の病気と思われてきました。しかし、女性も更年期になり女性ホルモンが減少すると尿酸が排出されにくくなり発症しやすくなります。若い女性でも無理なダイエットや低体重、ストレスなどで女性ホルモンが乱調になると罹患することがあります。
また、アルコールは体内での尿酸産生を増加させ、その利尿作用で尿酸が濃縮されるため痛風の発作を誘発させやすいと言われます。

2.痛風の症状は?前兆は?

血清尿酸値が高い状態が続くと、血液に溶けきらない尿酸が結晶化して関節に付着します。この付着物が何らかの原因で関節内で剥がれ、それを異物とみなした白血球が排除しようと炎症を起こします。前兆としては関節の違和感やムズムズ感を挙げる方が少なくありません。夜間に前兆や痛みを感じる方が多く、足の親指の付け根の痛みは約7割の方が訴えられますが、関節であれば手首など、どこにでも発症する可能性があります。痛みは7~10日間ほどで自然治癒しますが、高尿酸値を放置すると痛風関節炎は頻発し、痛風結節という肉芽組織ができたり、間質性腎炎に移行し尿毒症を生じることもあります。

3.痛風の検査と診断

尿酸はプリン体がエネルギーとして使用され不要になった老廃物の1つで、通常血液中や尿中に溶けています。人間ドックではこの血清尿酸値を測定しています。尿酸値が7.0mg/dLを超えるものを高尿酸血症と定義します。

4.痛風の治療
1.急性期の治療と型に合わせた処方

痛みの発作が起きたときは、患部を心臓より高くして冷やして安静にします。早めの鎮痛剤の内服も効果的です。温めたり揉んだりしないでください。発作を起こしている時期に尿酸を無理に下げると、却って痛みが悪化することがあります。2週間ほどしてから少量の尿酸降下薬の内服を開始します。関節の違和感やムズムズ感などの前兆のあるときは、コルヒチンを内服し発作の予防を図ります。痛風には、❶尿酸を体外へ排出する力が低下している「尿酸排出低下型」❷体内で尿酸が過剰に作られる「尿酸生産過剰型」❸この2つが重なる「混合型」の3つのタイプがあり、それぞれの型に合わせて薬剤を処方しています。尿酸値が下がり発作がしばらく起こらなくても、自己判断で内服を中止しないことが重要です。

2.食生活と運動の指導

第一は体重の増加に注意することです。食事では、穀類はプリン体が少なく、野菜やキノコ類、海藻は尿をアルカリ化して、尿にプリン体を排泄しやすくするとされています。プリン体の多い食品(鶏レバー、白子、干しシイタケなど)を極力控えてください。尿酸の排泄を促すために、水分は2ℓ摂るといいでしょう。週に2日以上禁酒日を作りましょう。適度な有酸素運動、週3回1日20分の散歩などがお勧めです。

最近、体重の増加が気になって減量されたり、糖質制限をされる方が多くいらっしゃいます。ご自身で食事をバランスよくコントロールして減量することはなかなか難しいので、管理栄養士による食事指導をご活用ください。お一人お一人に合せた食事療法をご提案いたします。また、薬品を使用した減量法も様々ありますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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