Tokyo International Clinic

メディカルコラムMEDICAL COLUMN

高橋 通 東京国際クリニック/ 医科 院長
メディカルコラム vol.6
心疾患
高橋 通東京国際クリニック/ 医科 院長

循環器専門医 医学博士
国立国際医療研究センター、六本木ヒルズクリニックを経て、 2015年 5月から東京国際クリニック/ 医科 院長。

ストレス社会、高齢化、食事の欧米化などにより、心疾患は増加しています。我が国の心疾患による死亡数は、厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると、2016年1年間の死因別死亡総数のうち、心疾患(高血圧性を除く)は19万8,006人で、死因別死亡数全体の15.1%を占め、ガンに次ぐ2番目に多い数字でした。推移を見てもガンとともに増加傾向にあります。心疾患の死亡数の内訳では、多い順に、心不全が7万3,545人、急性心筋梗塞が3万5,926人、その他の虚血性心疾患が3万4,534人でした。心不全というのは病名ではなく、なんらかの病気の症状として最終的に心臓のポンプ機能が低下した状態のことをいいます。その原因は、心筋梗塞、心臓の弁の働きが悪い心臓弁膜症、心臓の筋肉の動きに問題が生じる心筋症などの心臓病が非常に多く、甲状腺機能の異常のように心臓以外が原因になることもあります。どんな病気でも心不全になる可能性はあるのです。2位の急性心筋梗塞とは、心臓の血管が詰まってしまう危険な病態で、対処が遅れれば、死に至ります。3位の虚血性心疾患は、いわゆる狭心症ですが、これには、心筋梗塞に至る前段階の危険なものもあれば、心臓の血管(冠動脈)に動脈硬化が存在してはいるものの、内服で経過観察可能なものもあります。狭心症は、血管に動脈硬化が起きて、血液の流れが悪くなり、心臓の筋肉が酸素不足になってしまい、結果として胸の痛みが生じる状態です。その他にも異型狭心症という病態も存在します。朝方の胸の痛みがあるものの、検査してみると心臓の血管には動脈硬化がない、という、血管の内膜を覆っている血管内皮細胞という細胞の機能異常によるものもあるのです。

 

東京国際クリニックでは、心臓の検査のために、通常の心電図検査以外に、MCG(心筋虚血診断検査)という特殊な検査や、心臓超音波検査、精度の高い冠動脈CT検査などを駆使して総合的に判断しています。また、血管年齢検査や動脈硬化性疾患発症リスク検査(LOX-indexやMetabo CHART)を併用して、動脈硬化を早期に発見することも心掛けております。ご存知の通り、通常の心電図検査では、いわゆる胸痛発作が起きていないときには心電図変化は現れません。せっかく健康診断を受けたのに心筋梗塞を起こしてしまった、という話を耳にされた方も多いのではないでしょうか。この事象は、健康診断という限られたコスト内での各種検査ゆえに起きていると言っても過言ではありません。当院の冠動脈CTは、造影剤を使わないときには冠動脈の石灰化(カルシウム)スコアリングを行い、狭心症のリスクを判定します。この冠動脈カルシウムスコア検査は、多くの試験でその有効性が確認されており、心血管疾患発症の最も優れた予測因子とされています。

 

造影剤を使用した場合は、具体的に冠動脈のどの部位が何%狭くなっているのか診断できます。当院の2014年1月から2018年2月までの冠動脈CTの結果は、健診部門では、何も異常がないA判定の方の率は50.61%で、1年後の経過観察が必要なC判定の方の率は22.38%、精査加療が必要なD判定の方の率は15.57%でした。一方、保険診療部門では、A判定は46.70%、C判定は22.17%、D判定は19.81%でした。保険診療部門でD判定が多いのは、症状や心電図変化があったりしてもともと冠動脈に狭窄が疑われる方々を検査しているためです。注目すべきは、何も症状がない健診部門の方々のD判定率です。健診を受けられた方のほぼ5分の1弱の方々が冠動脈に有意に狭い病変を有している可能性があるという結果が得られたのです。さらに、D判定の方々を総合病院の循環器科にご紹介して心臓カテーテル治療が必要になられた方々は、D判定の方のうちのおよそ8割にのぼります。それ以外の方々は、冠動脈に狭窄はあるものの、内服加療で様子を見るという治療方針になっております。当院の冠動脈CTの精度が如何に高いかを再認識するデータとなっております。

 

さらに、当院の最新設備の一つとして挙げられるMCG検査は、通常の心電図の波形を周波数解析して、約40,000件の臨床データベース内の診断モデルと比較することにより解析結果を得るものです。この原理は、トンネルの壁の打音検査における周波数解析の原理と同じです。トンネルを壊さずに、内部や表面の傷あるいは劣化状況を調べる、あの打音検査の周波数解析です。この周波数解析を心電図波形にかけることにより、心臓の筋肉が虚血状態(酸素不足)にあるか、不整脈が起きる傾向にあるのかなどがわかります。これら多数の検査方法それぞれの特性を駆使しながら、個々の心臓に隠れている病態を多面的に調べられます。

 

以上のように、東京国際クリニックの心臓ドックや、心臓検査の項目の含まれたドックは心疾患に対してとても信頼性が高いと自負しております。普段お忙しく、なかなかご自身の身体に目を向ける時間の取れない方々には、効率よく心臓の状態を把握でき、安心して再び日常に戻れますので、大変お勧めです。

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