Tokyo International Clinic

メディカルコラムMEDICAL COLUMN

峯岸 祐之 東京国際クリニック / 形成外科  毛髪治療 美容外科
メディカルコラム vol.15
汗のケアと話題の治療法について
峯岸 祐之東京国際クリニック / 形成外科 毛髪治療 美容外科

千葉大学医学部卒、東京大学医学部附属病院形成外科、武蔵野日赤病院形成外科、神奈川クリニックを経て、東京マキシロフェイシャルクリニック勤務。
2015年7月から現職に。

汗と体臭

高温の環境に入ったり運動をすると、健康な人は汗をかきます。それ自体は、体温を下げようとするまさに正しい人体の反応と言えます。暑い夏は、汗をかいた方が自然なことと言えるのですが、社会生活を営む上ではなかなかそうはいきません。なぜなら汗は体臭に変化したり汗ジミを作ったりするからです。
オフィスやラッシュの電車内で他人の体臭は周囲の不快感を増大させ、少し前には強い香りのついた柔軟剤の使い過ぎが話題になりました。またアレルギー性皮膚炎や敏感肌などの方は、汗自体が刺激となり、拭き取ってもかゆみが残ったりすることもよくあります。
「熱中症には水分補給」と言われますが、それがそのまま再び汗になることを考えると、少し躊躇してしまうというのも頷けるところです。しかしここはプラス思考で、汗はかいてもいいから、できるだけ早く拭き取ったり、制汗剤などを積極的に使って他の人に迷惑をかけないようにしようと考えましょう。

さて制汗剤には、いまさまざまな種類があります。従来は自分の汗からくる不快感が気になり、それを快適にするいわゆる自分対象の「サラサラ清涼感タイプ」が主流でしたが、最近は、先述のように「他人に迷惑をかけない」ということが大前提となっていますので、汗から臭いのもとに変化する作用、つまり汗に体内の常在菌が付着して体臭となるのを抑える殺菌作用をもつタイプが人気となっています。形状はスプレー式やシート状のタイプ、直に塗るタイプなど、これもさまざまです。
また、汗には大きく2タイプあり、全身、手のひら、足の裏などの汗腺から出る汗のタイプと、脇やおへその周囲などから出る汗のタイプで、両者は種類の違うものです。全身や手のひらから出る汗は、無臭でサラサラとしていますが、後者は粘り気があり、菌が発生したり、身体のもっている常在菌が汗と相まって体臭となります。
脇から出る汗が「わきが」となることもあり、皮膚科を受診される方も夏になると増加します。また、「多汗症」と呼ばれる汗を人一倍かく方もいて、緊張すると手のひらが汗でびっしょり、書類なども湿ってしまいお仕事にも差し支えると訴える方もいます。
こうした汗や臭いによる不快感だけでなく、汗ジミも女性には気になるところです。

発汗に対する新しい治療法

このように、社会生活に支障を来すような発汗に対する治療がいま注目されています。わきがは、脇下のアポクリン腺という汗腺を除去する手術をすれば改善することが知られていますが、この手術は、痛みを感じることがあり、術後内出血で青いあざが出ることもあります。また、あざが残ると水着の着用などにも注意が必要になることもあります。さらに術後一定時間は安静が必要となるなどさまざまなデメリットもあります。
当院でお勧めするのは、ボトックスという薬剤を使用した治療法です。ボトックスは長年、形成外科、美容外科で使用されているお薬ですから、研究論文なども数多くあり、安心して使うことができます。1回の受診で、両脇やうなじなどにボトックスを注入すると、通常3日から1週間で効果が発現します。ボトックスは、神経末端から分泌され発汗作用を促すアセチルコリンという神経伝達物質の働きを抑える作用があります。
このボトックス注入療法は外来受診で可能で、痕も残りませんし、すぐにスポーツなどもできるというメリットがあります。
ボトックス注入療法は、個人差がありますが1度注入すると半年から1年もつ方もいます。最近では、女性の更年期障害における発汗などにも、ボトックス注入療法を希望される方が数多くあり、従来は汗をかく前の5月ごろに注入される方が多かったのですが、いまでは通年で受けられる方もいらっしゃいます。

夏の頭皮ケア

夏季は特に強い日差しを受けやすい頭皮のケアを心掛けてください。頭皮については夏を過ぎ、秋口になると気にされる方が増えてきます。しかし、実は夏の間のケアが非常に大切です。UV(紫外線)カットの日焼け止めクリームも各種ありますが、最近の酷暑の日差しの中の外出には熱中症予防のためだけでなく、頭皮を守るためにも帽子や日傘は必携です。
また、外出してどうしても汗をかいて不快だと頭をシャンプーなどで2度、3度と洗い過ぎる傾向が見られます。頭皮の洗い過ぎを避け、洗髪後はローションなどで潤いをもたせるようにしてください。
夏の頭皮ケアは、①日焼けを避ける②洗い過ぎを避けるという2つがポイントです。

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