Tokyo International Clinic

メディカルコラムMEDICAL COLUMN

高橋 通 東京国際クリニック/ 医科 院長
メディカルコラム vol.2
寒い時期に気をつけたい入浴と運動について
~循環器編~
高橋 通東京国際クリニック/ 医科 院長

循環器専門医 医学博士
国立国際医療研究センター、六本木ヒルズクリニックを経て、 2015年 5月から東京国際クリニック/ 医科 院長。

寒い時期の入浴と運動

今冬も寒さの厳しい日が多くなってきました。今回は寒い時期だからこそ気をつけておきたい体調や食事などの健康管理についてお話したいと思います。
冬は、寒さはもちろん、特に気をつけたいのが空気の乾燥です。乾燥は、のどの痛みを起こしたり、ウィルス感染(インフルエンザなど)につながります。東京国際クリニック/医科でもインフルエンザワクチンの接種が始まっておりますので、未だ接種されていない方は早めにお受けください。例年12月~2月がインフルエンザの流行時期になります。冬に体調を崩しやすいのは、体温が下がり免疫機能が低下することも一因です。加湿器での乾燥対策と同時に寒さ対策も必要です。身体を暖かくし、以下に述べるような適切な入浴の仕方も重要です。一昔前でしたら一番風呂は、その家の家長が入るものでしたが、実は、一番風呂は身体によくありません。脱衣所や浴室が温まっておらず、お風呂のお湯は熱く、その温度差が身体に大きな負担となります。体感温度が急に変わると末梢の血管が収縮し交感神経が高ぶって脈拍や血圧が上昇します。血圧が上がった状態で、熱いお湯に入ると、さらに血圧が上昇し、狭心症の発作や脳血管障害、大動脈解離のリスクが高くなります。大動脈解離は、胸や背中に移動する裂けるような痛みがあり、命にかかわりますので、そのような痛みを感じたら、我慢せずに必ず病院に行ってください。熱いお風呂は、急激な血圧上昇につながりますから、特に高血圧の人は気をつけてください。また、お風呂で温まって、血管が開くと、お風呂から出ようと立ち上がった時に血液が足の方へ落ちてしまい脳貧血を起こして倒れるケースが多く見られます。お風呂の適温は、40度以下が良いと言われています。
また寒い時期のジョギングなども注意が必要です。なるべく早朝の寒い時間帯を避け、夕方に行なった方がよいでしょう。朝方、自律神経のスイッチが入れ替わり、交感神経と副交感神経のバランスが変わります。この時間帯に心血管系の障害が起きやすく、さらにその時間帯は、より寒いわけですから、冬の早朝のジョギングは心疾患のリスクを高めます。血圧の高い方は、寒い日の運動は事前に血圧をチェックするなど注意が必要です。

魚のEPA

宮崎郁子先生のコラム「寒い時期に気をつけたい身体のこと~消化器編~」でも同様のテーマで詳しく触れていますが、この時期は忘年会や新年会などで、どうしても食生活が乱れがちになります。尿酸値が高い方、脂肪肝の方、中性脂肪が高い方は、特に食事摂取量に注意しましょう。お酒もチェイサーを用意してゆっくり飲み、顔が赤くならないような飲み方を心がけてください。よく言われることですが、野菜やたんぱく質から食べるようにしましょう。たんぱく質は良質なものを選んでください。お肉を食べるときは、一緒に野菜もたくさん摂りましょう。魚にはEPA(エイコサペンタエン酸・不飽和脂肪酸の一種)が多く含まれますのでお勧めです。EPAには抗炎症効果があり、動脈硬化を抑える働きをします。さらに血液をさらさらにする効果も知られています。1980年に千葉県の漁村と農村で、血中のEPAの濃度を調べるスタディーが行われました。予想通り漁村の方がEPAの濃度が高い結果になりましたが、心血管系の死亡リスク、死亡率は漁村の方が低いという結果も出ています。やはりEPA、つまり魚を食べることはとても大切です。
最近では食の欧米化が進み、魚料理も昔の日本食のように朝の食卓に並ぶことも少なくなりました。焼き魚も良いですが質の良い脂が落ちてしまうので、脂ごと摂れるお刺身などの食べ方が望ましいです。お寿司を食べるときは、肥満の方は炭水化物のシャリは少なめにしましょう。ただし、極端に炭水化物を減らすのはNGです。最近のトピックスによると、極端に炭水化物が減ると摂取した不飽和脂肪酸が体内で飽和脂肪酸に変わってしまい、動脈硬化のリスクが高まるというデータもあります。
EPA値は血液検査で分かります。EPA値を調べる項目の入っている「心臓ドック」などがありますのでぜひ受けてみてください。

過去のメディカルコラム